【書評】戸塚啓著 惨敗の理由

成田→シドニーの機内で読了したので、書評書きます。アジアカップ開幕前に何としても読み終えたかったので。

惨敗の理由

昨年12月30日に発売された戸塚啓著惨敗の理由

ちなみに僕、戸塚さんとは7年前の東南アジア4カ国共催のアジアカップ3位決定戦で起きた「パレンバンの奇蹟」で行動を共にして以来の知合いです。知合いといってもちょっと辛口で書評書きます。

この本は、2014ブラジルワールドカップの日本戦3試合(コートジボワール戦、ギリシャ戦、コロンビア戦)に焦点を当てて、9月に著者がイタリアに飛んでザッケローニ前監督に直接取材をしたネタを元に、日本代表の「惨敗の理由」に迫る内容になっています。

  • 選手たちが異口同音で語った「自分たちのサッカーができなかった」という一点に敗因を集約していいのか?サッカーとは相手ありきではないのか?
  • 「自分たちのサッカーができなかった」理由として、ザッケローニが繰り返し語る「勇気が足りなかった」という表現の真意は何なのか?
  • 「Coraggio(コラッジオ)」=「勇気」という解釈で本当に良いのか?
  • 「コンディショニングの失敗」を惨敗の一因にするのをなぜザッケローニは拒むのか?(指宿合宿での高負荷の是非、キャンプ地選択の是非、開催都市への移動日の是非など)
  • ギリシャ戦で交替カードを1枚余らせて終えた理由は?斉藤学を使わなかった理由は?
  • 一度も練習したことがないパワープレーをW杯本番でなぜしたのか?

通訳日記がザックジャパンの内側から描写のみに留めた書籍ならば、この本はザックジャパンの外側から「なぜ」という問いかけを繰り返すことで徹底的に敗因分析をする手法を取っています。

じゃー帯にあるようにザックが今までに語りもしなかった真相を「激白」しているかというと、これは明らかに読者を欺いていて、角川書店が売上を伸ばしたいだけの宣伝文句だと思います。実際、エピローグに入る前の最後の文章で「チェゼナティコまで来たというのに、胸のなかのしこりは残ったままだった」と戸塚さん自身が「激白」してしまっていますw

戸塚さん自身が惨敗の真の理由を探ろうと、「なぜ」「なぜ」「なぜ」の質問を漏れなくダブりなく用意周到にイタリアまで持参したのに、W杯の敗戦から3カ月しか経ってない時点ではザックはぶっちゃけトークをほとんどしてくれなかったというオチでした。

ただ、コンディショニングから選手交替、戦術、メンタルの部分まで網羅して敗因分析を行った書籍はこれしかないと思います。僕もW杯後に出てきたネット上のコラムやサッカー雑誌を読み漁って、断片的に各分野の敗因分析に触れてきてますが、ここまで網羅感を出して総括している書籍はありません。

そういった意味で、今一度、あのブラジルの地での270分間を振り返ってみたい人は、必読です。

ザック自身からは納得感のある回答を結果的にもらえなかったけれども、エピローグでは戸塚さん自身が仮説を持って敗因を語る構成になっているので、それを各自が噛み砕いて、まだ胃の中に残っている「わだかまり」を消化する一助になればいいなと思います。活字好きな人は、是非通訳日記とセットで読んでみてください。

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