JFAがブラジルW杯の敗因分析を詳細に公開しない理由とは?

日本サッカー協会(JFA)がブラジルW杯の敗因分析の発表を片手間に終えて、早々とハビエル・アギーレ氏の日本代表監督招聘の発表をしたことに関し、メディアやサポーターの間で、物議を醸し出しています。

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なぜW杯敗退の検証を行う前に次期監督が決まるのか?

問題解決の基本中の基本である、PDCAサイクルの3つ目のステップ、Check(検証)作業を疎かにして、Action(改善)をすることはご法度です。失敗した理由は何だったのか?つぶさに原因を分析して、その原因を潰す対策を練った上で、初めて次のステップに行く準備が整います。そんな簡単なこと、ちょっとビジネスをかじったことのある人であれば、当然知っていることです。

しかし、本当にJFAはその検証作業をサボって、次の監督を決めたのでしょうか?そんなことは到底有り得ないと思い、インターネットに転がっている記事を色々と調べてみると、今朝ゲキサカが公開したJFAの記者会見要旨の詳細記事にヒントはありました。

7月1日に技術委員会を開き、これまでにいろんな検証をしてきた。現段階の総括について、技術委員会や強化担当者会議、J1、J2、J3の実行委員会で説明し、今日の理事会でもプロジェクターを使って説明した。(ゲキサカの記者会見要旨から引用)

この記事は原さんの記者会見の模様がほぼ省略されない形で記載されているので、会見の主旨について断片的な情報しか知らない人は一読する価値ありです。

「プロジェクターを使って」とあるので、ある程度の数値データを使った分析資料が存在しているはずです。Jリーグの実行委員会でも説明されているのであれば、それなりの粒度でW杯敗因検証作業が行われているように見受けられます。あくまで推測ですが。

では、なぜJFAはその詳細の敗因分析資料を公開しないのか?

理由は明確で、そんなもん公開したもんならライバル国に弱点をさらけ出す形になるからです。きっと機密性の高い選手個人個人の詳細データも含まれていることでしょう。そういう理由で、原さんも記者会見で概要レベルでしか敗因分析を語ることができないんだと、僕は勘ぐっています。

こういった公開できない理由も含めて、記者会見で説明してほしかった。もしくは、JFAの公式サイトなどでサポーターに向けた直接の情報発信があってもいいと思います。記者会見だとメディアを通して世間に伝わる形となり、当然原稿の文字数制限などで省略される部分が出てきて、誤解を生むケースもあるので。

ただし、公開できないデータ以外の部分では、もっと詳細に失敗した原因の分析を行ってほしかった箇所があります。例えばイトゥの合宿地選びと、開催都市への前日移動について。

ゲキサカの記者会見要旨では「12月の抽選会前に合宿地を決めなくてはいけなかった」という言い訳がありますが、優勝したドイツ代表は開催地決定後に、試合会場に近いブラジル北東部に、代表スポンサーの協力を得て合宿施設を建設するという必殺技を繰り出しています。さすがにここまでの秘策をJFAに期待するのは酷かもしれませんが、代替案の検討なしに決めつけていなかったかという部分も含めて、もっと議論されてしかるべきだと思います。

また、開催都市への前日移動についても、例えば第3戦で対戦したコロンビア代表はクイアバの特殊な気候に慣れるために、前々日に合宿地からクイアバに移動してきていました。それに対して日本代表は、全3試合とも律儀に前日移動。この部分については「そのことで議論もしたし、いろいろ考えたが、イトゥにいる時間を長くしたいということでそうした」という反省の弁にすらなっていないコメントで終わっています。ここはもっと報道陣に突っ込んでほしかった。

私見ですが、この2つのポイントについては、原因の原因を突き詰めていくと、もしかしたらJFA内の「意思決定プロセス」に欠陥があるのかもしれません。

コロンビア戦コロンビア戦後の写真。これがザックジャパンの最後でした。

こういった記者会見を見ていると、JFAは僕らサポーターのことを軽視しているように感じられます。JFAにとってのカウンターパートはお金を出してくれるスポンサーであり、選手を送り出してくれるクラブチームであって、ビジネスとして何か契約を結んでいるわけでもないサポーターに対する説明責任はない、と言われればそれまで。

でも、それではあまりにも悲しいではないか。「無償の愛」といっても限度がある。

僕らサポーターもある程度納得するレベルでの敗因分析の公開を望みます。公開できないデータがあるなら、その理由を含めてちゃんと説明してほしい。特にJFAの運営面(キャンプ地選びや前日移動)については、当事者の分析なんぞ責任逃れの何ものでもないから、第3者であるメディアがしっかり批判して、PDCAサイクルを正しく回す原動力になってほしいです。

それがフットボールファミリーの一員としての願いです。

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