世界最強を決めるW杯決勝という大舞台で、前半16分までにまさかの4失点。ある程度の苦戦は覚悟していたにせよ、ここまで一方的な展開を予想していた人は少なかったのではないか。
国際大会で大差をつけられて敗北を喫するのは、2006年ドイツ男子W杯のブラジル戦(1-4)、2014年ブラジル男子W杯のコロンビア戦(1-4)を現地で経験しているが、さすがに前半16分で4点叩き込まれたのは、人生初。
決勝の地、バンクーバーはシアトルから車で3時間という地理的な事情もあり、とにかくスタジアムはアメリカ人で埋め尽くされていた。
アメリカサポーターの迫力は、ちょっと今までの国際大会では見たことがないような次元だった。応援が凄いとかそういう話ではなくて、ゴールが決まった瞬間の、あのスタジアム全体がドッカーンと爆発するような感覚(欧州サッカーでも度々見られるシーンだが、アメリカ人のそれはちょっと性質が異なる気がした)。あんなのを16分間で4回もまざまざと見せつけられると、さすがに僕も心が折れそうになった。
そんなとてつもない逆境の中、僕らも必死にニッポンコールを送り続けるも、多勢に無勢。回りを取り囲むアメリカ人たちは、こちらの太鼓のリズムに合わせて意図的にUSAコールをかぶせてくるので、僕らの声がいとも簡単にかき消される。
「蹂躙」とはまさにこの状況。
それでも僕ら現地入りしているサポーターは、声を出して選手の背中を押すことしかできないので、どんなに苦しくても勝利を信じてコールを送った。
そして訪れた前半26分の大儀見優季の得点。僕らゴール裏の目の前で決めてくれた。鳥肌が立った。
後半立ち上がりのオウンゴールでの追加点。いける。あと2点――。と思った2分後にまたもセットプレーから追加点を許し、2-5。万事休す。
試合内容でもそうだが、応援でも完敗。ここまで徹底的に叩きのめされたせいか、僕は試合後、涙すらでなかった。
表彰式でアメリカ代表が歓喜の輪を作っているシーンを何度もこの目に焼き付けた。この悔しさを忘れずに、また次の国際大会への糧としたい。
ワールドカップは負け方が全て
女子ワールドカップなら24カ国中23カ国、男子ワールドカップなら32カ国中31カ国が途中で敗れ去る。栄冠を掴めるのはたった1カ国なので、当然の数字だ。
優勝国以外の敗退した国において、最も重要なのは「負け方」だと僕は思う。
なでしこの決勝の戦いぶりを見ると、「Good Loser」だったと改めて感じる。サッカーという競技では決定的な3点差が最終的にはついてしまったが、最後の最後まで1点を取りにいくひたむきさには、心打たれた。
最後は自陣のコーナーキックで、前線に4枚残して捨て身の攻撃を試みた。普段やらないスリートップの布陣に変更し、がむしゃらに点を獲りに行った。岩渕真奈は1対1の場面になれば、何度も何度も失敗しようが、必ず得意のドリブルで仕掛けた。菅澤優衣香はアメリカの長身DF相手に得意のヘッドで真っ向勝負した。大黒柱の大儀見優季は一矢報いるゴールを決めて、ロンドン五輪決勝に続いてファイナルでの勝負強さを見せつけた。
そういう意味で、アメリカ相手に完敗ではあったが、誇り高い負け方だったように思う。なでしこジャパンには胸を張って帰国してほしいと切に願う。
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ということで、いつもの写真羅列の現地レポいってみます。
試合前に日本代表サポーター皆で記念撮影
星条旗をマントのようにして闊歩するアメリカサポーター
こんなかわいらしいアメリカ人の子供もいました
スタジアムをパノラマ機能で撮影
収容人数は満席の53,341人
女子ワールドカップファイナル、アメリカ5-2日本、試合終了。5失点で肩を落とすGK海堀をFW大儀見がずっとハグをして、慰めていました。 pic.twitter.com/N0qVHDox8i
— 村上アシシ@カナダ (@4JPN) 2015, 7月 6
ホントずっと、かなり長い間ハグしてました。 星条旗を掲げてウイニングランをするアメリカ代表選手 表彰台にあがる日本代表を見送るアメリカ代表 表彰式が一段落した後の全員での円陣。きっと右側で喋ってるのはキャプテン宮間 以前シアトルでチームメートだった川澄とラピノーが試合後に話していました。
大会全体の総括は、ちょっと間を置いて、改めて書きたいと思います。 今大会はなでしこサポーター、現地在住の日本人など、様々な人に現地でお世話になりました。この場を借りてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。また世界のどこかのスタジアムでお会いしましょう。
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7月11日土曜夜に大阪で帰国報告会やります。現在48人の申込。まだまだ入れます。詳細はこちら
村上アシシのプロフィールはこちら。(先日更新しました)