コンサドーレ三上大勝氏がGMと社長を兼任する良い面/悪い面を語る

野々村芳和氏をJリーグ本体に引っこ抜かれる2022年1月まで、コンサドーレは

野々村芳和氏=社長(経営トップ)
三上大勝氏=GM(現場トップ)

と役割分担をした上で、うまくクラブを運営してきました。


↑5年前にインタビューしにいった時に撮った写真

野々村氏がJリーグチェアマンになった2022年以降、三上大勝氏が「代表取締役GM」という役職に就き、経営トップと現場トップを兼任するようになりました。

スポンサーリンク

「二刀流」のメリット

一人二役のことを「二刀流」とポジティブに捉える向きもありますが(道新がそういう記事を書いてる)、マネジメント論的には予算がない企業の常套手段で、ひとりで200%稼働頑張ってください、と無茶ぶりしている訳です。

一人二役のポジティブな面を見てみると、

・この重責を担っている最中、三上さんのビジネススキルが飛躍的に向上する
・会社としても野々村さんの後釜を新規で雇うコストを浮かすことができるので経費削減につながる

こういった良い点が挙げられますが、僕はこれらよりもデメリットの部分に着目すべきかなと考えています。

「二刀流」のデメリット

GMと社長の一人二役は結果的に、いろんな管理領域で綻びが出てくるのがデメリットかなと。

例えばサポーターの期待値コントロールの領域について。

売上目標に責任を持つ人が社長、現場成績の目標に責任を持つ人がGM、という建て付けが一般的です。

野々村体制時のコンサドーレは、広告塔の役目を果たした野々村社長が「現場の目標は知らんけど、うちの予算規模はJ1で中位~下位にあたるのよね」とメディアを通して毎年のように説明し、サポーターの期待値コントロールをうまくやっていました。

それが三上体制になって以降、現場の成績目標と経営面の売上目標、どちらに対しても責任を持つ三上さんが、2つの目標をあまり切り分けずに、ごっちゃにして説明するもんだから、サポーターの納得感があまり得られない状況になってきているな、というのがツイッターのタイムラインなどを見ていて感じる、率直な感想です。

つまり、三上さんが一人二役で会社を回すことになって、サポーターの期待値コントロールまで手が回っていないのが現状かなと。

マネジメントの本質

僕はよく企業内研修の外部講師として、マネジメント論を語る際に

リーダーとは、チームを引っ張っていく人

マネージャーとは、いったん止める人

と教えています。

どういうことかと言うと、リーダーとはその名の通り、組織をリードして、メンバーを鼓舞しつつ、目標に向かってチームを引っ張っていく人という意味。

それに対してマネージャーとは、目標に向かって邁進しているチームをいったん止めて、方向はあっているか?予算超過してないか?メンバーに対する負荷の偏りがないか?などをチェックして、その都度改善していく人、という意味合いで語るようにしています。

英語のManageは元々「馬を御する」が語源となっています。手綱を引いてスピードを制御したり、向かう方向を調整したりするのがマネージャーの役割、というわけです。

つまり、マネージャーとリーダーって、本質的には真逆の役割なんですよね。

2022年までのコンサドーレは、現場のリーダーを三上さん、経営面のマネージャーの役割を野々村さんが担っていました。

「天井効果」というバイアス

三上さんが現場の目標(タイトル獲得とかACL出場権獲得とか)を高らかに掲げ、野々村さんはとにかく現場で活用できるリソースを最大限に増やすために営業活動を頑張る、そんな役割分担がされていたように思います。

現場の目標は当然、高い方がいいです。心理学の分野では「天井効果」というバイアスがあり、人間という生き物は低い目標を掲げてそれを達成してしまうとそれ以上に頑張らなくなってしまう特性があるためです。

なので、現場では選手たちのモチベーションを維持するために目標は常に高く設定したいのが本音です。

ではその現場の目標を達成するために、予算度外視でボコボコ有力選手を獲得すればいいかというとそんなことはなくて、会社が経営破綻しないように制御していくのが経営者の役割なわけです。

三上大勝氏の過労が心配

こうやって説明していくと、視座が異なるGMと社長を一人二役で回すのが、いかに無理ゲーかというのがお分かりいただけるかと思います。

解決策としては、野々村さんに早くコンサドーレの社長に戻ってきてもらうことが一番なんですが、過去のチェアマンを見てみると、任期は短くて4年。彼がチェアマンを辞めるのは早くて2026年になりそう。

Jリーグ本体にクラブ内で最も優秀な人材を強奪されるという非常事態を残り2年、どうやって乗り越えていくのか。今後のコンサドーレの経営面については、外側から継続してウォッチしていこうと思います。

※このブログはコンサドーレの運営を批判するつもりで書いたわけではありません。今の現状をコンサル的に評価すると、こんな良い面・悪い面があるよ、と客観的に論じたまでです。三上さんが過労で倒れないか心配です。コンサドーレの内側の人たち、健康に気を付けて頑張ってください。

<関連記事>

タイトルとURLをコピーしました